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【29】自閉症のある子どもの確かな学びのために

 
「特別支援学校における自閉症の特性に応じた指導パッケージの開発研究―総合的アセスメント方法及びキーポイントとなる指導内容の特定を中心に― 」(平成20年9月)より  
 
 キーワード: 知的障害特別支援学校 自閉症 指導内容
 
【この研究では】

 自閉症のある子どもの学校教育における支援の充実は、中央教育審議会等の報告においても指摘があり、緊急の課題として位置付けられています。発達障害者支援法(平成17年4月施行)や、学校教育法等の一部改正(平成19年4月)など、自閉症教育を推進するための重要な法律が施行されました。本研究では、このような状況において、自閉症教育に関して、学校における取組の平均的な基準、スタンダードの確立をめざすべく、自閉症教育の改善のための具体的なツールを開発・提案し、指導内容、指導方法、自閉症の特性に応じた教育課程等を検討しました。


【研究をして見えてきたこと】

 本研究では、自閉症教育における学習の基本構造を図1に示すように整理しました。この学習の基本構造を前提に、自閉症の特性に応じた指導内容・方法、教育課程等を検討し、学校組織及び一人一人の教員が、 自閉症教育を改善していくためのツールとして、「学校全体で自閉症教育に取り組むためのチェックリスト」,「学びを促進するための特性の理解と活用のチェック表」,「自閉症教育のキーポイント」,「授業の評価・改善シート」,「個人別の課題学習」等を開発・提案しました。

自閉症教育における学習の基本構造

 《学校全体で自閉症教育に取り組むためのチェックリスト》とは

 シートA「指導内容・方法」、シートB「学校マネジメント」からなる40項目で構成されています。現状の分析や継続的な取組状況をモニターするために活用したり、研修に活用したりするなど、自閉症教育の改善のために使用することを目的としました。

 《学びを促進するための特性の理解と活用 チェック表》とは

 自閉症のある子どもには、以下のような学習上の困難や特性が見られます。これらの特性を「強み」としてポジティブに理解し、学びを促進する指導・支援に努めることが大切です。

  1. 意思伝達の質的な困難、
  2. 対人的相互反応における質的な困難、
  3. 行動や興味が限定され、反復的で常同的な様式がある場合、
  4. 感覚の過敏、または鈍感がある場合、
  5. 手続き的な記憶の仕方が得意な場合、
  6. 短期記憶より、長期記憶に働きかける学習方法が有効な場合、
  7. 聞きながら学ぶより、動作・操作を伴った学習方法が有効な場合、
  8. 聴覚より、視覚的な情報処理が得意な場合、
  9. 特別な能力(独特の思考方法等)を有する場合、
  10. 同時に複数の情報を処理することが難しいことがある場合「モノ・トラック(シングル・フォーカス)」
  11. がんばりどころや、休むべきところを取捨選択するのが難しいことがある場合「セントラル・コヒーレンス」

 《自閉症教育のキーポイント》とは

 自閉症のある子どもの1000サンプルの実践例をビデオ分析し、7つのキーポイントして整理しました。図1の「学習を支える学び」にあたる部分です。キーポイントは、アセスメントや自立活動の目標と内容のエッセンスなど、幅広い活用の可能性を持っています。

  • 自ら学習する態勢になる力
  • 自ら指示に応じる、指示を理解できる力
  • 自ら自己を管理する、調整する力
  • 自ら楽しいことや嬉しいことを期待して活動に向かう力
  • 自ら何かを伝えようとする意欲と個に応じた形態を用いて表出する力
  • 自ら模倣して、気づいたり学んだりする力
  • 自ら課題解決のために注視すべき刺激に注目できる力

 《授業の評価・改善シート》とは

(1)自閉症教育の7つのキーポイントを実際に活用する、(2)授業の計画・実行・評価・改善をねらった授業づくりの二点をねらって開発したツールです。プラン、シート、カルテ、メモリーの4つの書式からなっています。

 《個人別の課題学習》とは

 「自立活動を『核』とした領域・教科を合わせた指導」の形態の総称であり、従来の「遊びの指導」「生活単元学習」とは、根本的に発想が異なるものです。個々の障害の状態や発達の程度に応じて課題設定をすることを前提としていますが、実際の指導場面では、「個別での学習」「小グループでの学習」「集団での学習」などのタイプがあると考えます。


【研究に関する情報】

 本研究では、総合的なアセスメント方法として、(1)学校全体で取り組むためのチェックリスト、(2)学びを促進するための特性の理解と活用のチェック表を活用し、また、特性に応じた指導内容・方法として、(3)自閉症教育のキーポイント及び(4)それを活用した授業の評価・改善シート、(5)特性に応じた教育課程を検討し、それらを指導パッケージとして開発しました。研究協力校、研究パートナー校の実践データを踏まえ、質の高い自閉症教育を実現するためには、自閉症の特性を踏まえ、キーポイントを鍵とした「個人別の課題学習」の展開が重要であると考えます。この指導パッケージのエッセンスや指導内容・指導方法、自閉症の特性に応じた教育課程は、特別支援学校の実践だけではなく、小・中学校においても応用できるものと期待しています。


【研究組織】

 小塩允護・徳永 豊・内田俊行・木村宣孝・佐藤克敏・齋藤宇開・涌井 恵・小澤至賢・柳澤亜希子


【研究課題名】

 特別支援学校における自閉症の特性に応じた指導パッケージの開発研究―総合的アセスメント方法及びキー ポイントとなる指導内容の特定を中心に―(平成18年度~平成19年度)


【もっと詳しくお知りになりたい場合は】

 「自閉症教育実践マスターブック‐キーポイントが未来をひらく‐」http://www.kyoikushinsha.co.jp/をご覧ください。「自閉症教育実践ガイドブック」、「自閉症教育実践ケースブック」と合わせて、三部作として作成しました。

研究所研究紀要にも関連論文が掲載されています。

自閉症教育実践マスターブックの画像

【本研究紹介シートの文責】

 小澤至賢


本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。